「とある沼地で」
ん? 抱えてる荷物?
いやいや、中身見ろよ。アイルーだよ、アイルー。オトモのヒョウ。
マテコラお前、おくるみ言うな。
疲れて寝付いて、今日は寒いから毛布にくるんでやったの。
ったく、お姫様だっこするなら女の子の方がいいよ俺だって。
ああ、狩りの帰りだ。
ん、何処行って来たかって? 沼地だよ。見れば解るだろ。え、解らない?
ははは……鎧はヒョウが懇切丁寧に磨いてくれたからなー。でもほら、靴の裏に服の中。
インタビュー? 話? あー、ちょっと待ってて。着替えて来るから、その後な。
(10分後)
よ、おまたせ。寝付いたヒョウは起こす方が難しいから大丈夫っ!
へ? 早くしろ。せっかちだなあ。
標的はオオナズチ。
場所は沼地。
その沼地がさ、また最悪だったんだわ。
足にまとわりつくぬかるみ、かび臭い空気、空が紫に見えたは気のせいじゃない。
濁った水が泡一個吹くたびに奴の気配を怯えて振り返った。
え、ヒョウは何やってたって?
……キノコ拾って喜んでた。
後ろから忍び寄って来たときは叩き潰してやろうかと思ったが。
ピリピリ警戒しすぎ? いやいや、まだ足りないぐらいさ。
なにせ見えないんだ。波紋? 影? いーや、どれもダメだったね。
こんな事なら鷹見のピアスを引っ張り出せば良かったかねえ……。
探すだけで相当時間を食ってさ、腹ごしらえしようと思ったのが間違いだった。
ああ、肉焼きには自信があるんだ。
ほら、時間は経ってるけど、十分勧められるぜ。
な、冷めても噛んでけば旨みが、じゅわ〜……え、続き話せって?
うーん……あんた、フルフェイスの兜被ったことあるか?
何があるか解らないから脱がずに、マスク部分をずらして食べるんだ。
せっかくの焼きたてをゆっくり味わえないのは……あ、はい。肉焼き自慢は自粛します。
それから……2,3分ぐらいかね。
目の前にピンクの何かが現れたと思ったら、ガツンッて。
目の前に火花が散った。
顔面を突き抜けるような衝撃、激痛。
為す術もなく前のめりに引き倒された。
怖かったね。
それが今回の標的、オオナズチの舌だと解ったから。
必死の抵抗むなしく引きずられる体。
兜から、鎧から、全身に染みこんでくる泥水。
むせかえるような生臭い匂いは血が混じってた。
そしてなにより、首を締め上げる「何か」。
俺は今、頭から食われようとしている。
半狂乱で暴れ狂ったんだと思う。
気がついたらベースキャンプで寝てた。情けないことに気絶しちまってたのさ。
んで、起きて最初に見えたのは緒が切れて、マスク部分の無くなった兜。
それを抱えて、申し訳なさそーにしているヒョウだった。
そう、俺の首を絞めてたのは兜の緒だったのさ。
ヒョウが気を利かせてそれを切ってくれなかったら、本当に今頃ナズチの腹の中だったろうぜ。
そのヒョウの奴なんだけどさ、俺が気絶してる間に兜取り戻しに行ったっていうんだ。
そのあと、烈火のごとく怒った。頭にかーっと血が上って、怒鳴って怒鳴って怒鳴り倒した。
強敵と鉢合わせたとか、命の危機とか以外で記憶が飛んだのは初めてだった。
……ヒドイ?
何言ってやがる。
コイツの命に比べたら、兜なんて安いもんだろうが。
※ちなみに彼の兜、レウスXヘルムである。