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月別アーカイブ  [ 2006年09月 ] 

竜と巫女 

 昔々あるところに、ちいさな村がありました。
 村は暖かく豊かな土地でしたが、その為に魔物も多くいて、
 収穫期になると魔物退治に四苦八苦していました。
 それが村人達の唯一の悩みでした。

 ある日、村の近くに白い竜が住み着きました。
 その竜の目当ては村の近くにたくさん居る魔物でした。
 収穫期になるとこのあたりに増える事を知って、
 その間はここにいようと決めたのです。

 村人達は喜びました。
 毎年何人も、魔物のせいで帰らぬ人になっていたからです。
 収穫期に森に入れるようになったのも初めての事でした。
 そこで、村人達は森で取れた果物をお礼に供えました。
 最初は何だろうと思っていた竜ですが、
 大好きな果物は、竜の大きな手では取りにくかったもので、
 せっかくなのでと頂きました。
 魔物がいなくなると竜もいなくなりました。

 翌年の収穫期にもまた魔物がやってきました。
 もちろん竜もやってきました。
 その度にお礼の果物をお供えしました。
 豊作の年には牛をお供えしたりもしました。
 竜にも、それは自分が魔物を退治してるおかげだと解ってきました。
 そうしてこの村で、竜は神様の使いになりました。

 所がある年、酷い日照りに見舞われました。
 田畑は枯れ、果物も実らず、なのに魔物はやってきました。
 もちろん竜もやってきました。
 竜は魔物を退治してくれましたが、お礼の作物と果物がありません。
 牛も残ったのは乳牛一頭で、村はギリギリの状態でした。
 困り困った村人達、とうとう人身御供を差し出すことに決めました。
 選ばれたのは村では変わり者の娘でした。
 見えない何かと話をし、夜になると近くがぼんやりと光る不思議な娘でした。

 村人達の心配を余所に、娘は自分から人身御供に申し出ました。
 果物の代わりに彼女を置いて、村人達は帰っていきました。
 困ったのは竜の方です。
 どうして娘を置いていったのか全く解らなかったのです。
 長く村に通い続けて、竜は人を好きになっていました。
 食べる気なんてありません。
 娘も帰るわけにいきません。
 悩み悩んだ一人と一匹、仕方がないので一緒に余所へ行きました。

 竜と娘は半年の間に世界中を回りました。
 その間、竜は狩りで肉を集め、娘は森で果物をあつめました。
 鱗の間に小さな棘が挟まって竜が困っていたときは、
 娘が取って上げました。
 たまに失敗して鱗が一枚こぼれ落ちる事もありましたが、
 娘はそれをお守りにとっておきました。
 すると、街道沿いで出会った商人に、
 鱗を譲ってくれと頼まれました。

 家畜をさらう悪い竜もたくさんいて、
 追い払うのがやっとだったので、鱗は今よりずっと高価なものでした。
 鱗と交換に、娘は服と本を買いました。
 挿し絵がちょうど、村にいたころ話していた見えないものそっくりだったのです。
 本を読んで娘は魔法を覚えました。
 あの村には、いいえ、村のある国には、魔法使いがいなかったのです。
 ちょっとした怪我ならすぐ治せるようになりました。
 熱い場所でだしてくれる氷をかじるのが竜の楽しみになりました。
 同時に、零れた鱗を持って街に買い物にいくようにもなりました。

 村ではまだ不作が続いて、とうとう魔物もやってこなくなりました。
 それを知った娘は貯まった鱗を全部食べ物に買えて、
 いつもお供えしている場所においてきました。
 また竜がやってきたと思ってそれを見た村人は、
 喜んで食べ物をもって帰りました。
 それを見て、娘と竜はこっそり村を後にしました。

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[ 2006/09/22 14:31 ] 創作小説 | TB(0) | CM(0)
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