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ACXプロトタイプCase1 

 ガラス張りの北側から心地よい日射しが差し込む。
 空軍基地の設備とは思えないほどお洒落なカフェだった。
「時代は変わりましたねぇ」
 目の前でカルピスを啜る-記憶が正しければ40をとうに過ぎた-師も同じ感想をもったようだ。
 癖のある赤毛、無難なベージュのジャケットしか選ばない私服のセンス。
 再会の度に感じるやつれた印象も含めて、師の風貌に変化は感じられなかった。
「そろそろ、止した方がいいんじゃないですか?」
「ぇー」
 何杯目かになるそれを取り上げる。いい年して味覚も相変わらずだ。
(2倍希釈をやめたのは流石に年か?)
 その正体こそ公の知る所ではないが、糖尿病が原因でぱったり逝かれるのは困る。
 最期が糖尿では師事したこっちが情けなくなる。せめて暗殺か古傷。
 もちろん、天寿を全うしてくれればそれに越したことはないが。
「で、何しに来られたんです?」
 少なくとも、片田舎の司令とはいえ教え子の出世祝いに気軽に出られる人間ではない。
 今頃何人かが泣いてるか胃痛を訴えてるかもしれない。
 そんな事は何処吹く風とばかりに師が口を開く。
「どうです、ここ最近?」
 それも質問とは全く無関係な事を。
「お隣が静かになりましたから、軍人は当分暇になるかと」
 隣国の内乱がやっと収まった。
 以前までその余波を警戒していた上がそれを知ったとき、真っ先に行ったのが配置換えであった。自分の立場を揺るがすような危険な若造を置いておく義理は無いと言うことだ。
 皮肉った笑みが浮かぶ。師の表情からは笑みが消える。
「それ、本気ですか?」
「ご冗談を」
 内憂を始末したのなら、どんな形であれ次は外患に取りかかるだろう。
 隣国は潜在的敵国。ともすれば最悪の形で。
 師の来訪が、それが杞憂でない事を示していた。
「昇進祝いは、私からの奢りと言うことで」
「飲み食いしていたのはあなただけです」
 国境沿いから外されたときに安堵した自分は軍人の鑑ではない。
 かつてエースと呼ばれた師の背中を見送りながら、溜息を吐く。

 触れれば折れそうな肩が、それを見透かしているようだった。
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[ 2006/09/13 16:19 ] エースコンバット | TB(0) | CM(0)
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