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ACXプロトタイプCase2後編 

-な、何だったんだ……。
 最後は、0だったダメージカウンターが一瞬で100を超えた。
 キャノピーに被弾。実戦で在れば即死。
 シートに、ヘルメットを外すことも忘れ崩れ落ちるように体を預ける。
 為す術が無かった。本気、全力、否、それまでの自分からは信じられないほどの力を出し切った実感は確かにある。にも関わらず。
 残り20秒まで後ろを取り続けられたのは奇跡でも何でもなく、戦略の一部。
 ありとあらゆる手を尽くし応戦した。無駄だった。
 最後の20秒は圧倒的な力量の差を思い知る時間だった。
 その機動に殺気すら感じた。
 ただ、後ろを取られる直前、相手が一瞬止まったように見えた時、何かが脳裏を過ぎった。
 それが何だったのか解らないままコックピットを這い出して、黒髪の、ソロンと呼ばれた男に視線を移す。
 ソロンがパイロットと、並ぶ。
「……勝負、受けてやれ」
 小声のつもりだっただろう言葉は、いつの間に広がっていた静寂の為に聞き取れた。
「遠慮させていただきます」
 ソロンの顔が曇る。白い歯を見せたのは打ちのめされていない意志表示というよりも、勝利宣言に近かった。
 解らない。だが最大限の敬意を払うべき相手だと頭の片隅から聞こえる。
 その「彼等」に、認められた。それだけで十分だった。
 隊長が彼等の横に来たときは不快だった。同時にせせら笑っていた。
「君は、実戦経験があるのかい?」
「……ええ、ベルカ事変で」
 落ち着いて聞いてみればベルカ語独特の堅い発音だった。
 ベルカ事変、別名、環太平洋戦争。自分がパイロットを志すきっかけ。
 あの時祖国の亡霊を食い止めるべく現れた有志達の一人だったんだろうか。
「君!」
 そこまで考えたとき、よく通る声が耳をついた。
 顔を上げる。気付けば隊長がコックピットに滑り込み、ソロンがタラップに足をかけていた。
 もう一戦やるつもりだ。
 ……エアショーパイロットの方は見る価値が無いとばかりベンチに横になっている。
 ウイングマン、整備士に金髪の女の子も同様らしい。
 眼帯のマネージャーに松葉杖でつつかれても何処吹く風。
「よく見ておけ」
 既に、勝負の結果は見えていた。その通りになった。
 そして気付いた。彼等が何者なのか。
 平民風情が王と知らず剣を向けた、そんな感覚が背を抜けた。

 気付いた。しかしどうする。そのまま突き付けられない。
 まして勘違いだったらどうする?でもそうしたら、よく見ておくものとは?
 間違いない。間違いないのに、どうしたらいい?
 その場で転げ回りたい程の喜びに理性がまともに働いているかさえ怪しと思っていた。
 だが不安とは裏腹に、アドレナリンが効いたのか、対して優秀でもないはずの脳味噌が異様なまでの冴えを見せた。
「俺には夢がある!」
 呼び止めようとさえ思わなかった。
「アンタ達みたいなパイロットになること!!」
 彼は、ラーズグリーズの英雄は、三つ編みのパイロットの肩に手をあてて返した。
「俺達のいらない世界を作ってみろ」
 それが答えだった。
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[ 2006/09/16 14:28 ] エースコンバット | TB(0) | CM(0)
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