昔々、小さな国の近くの山に、金色の竜が住んでいました。
ある日竜は言いました。
竜より強い生き物がいたら、私の宝を譲ろうと。
そう聞いた国の騎士達、次々勝負を挑もうと山に向かいます。
所が、一人辿り着く度に竜は言うのです。
その立派な剣は誰が作った?
その立派な鎧は誰が作った?
そう言われて、引き返したり身一つで挑んで蹴飛ばされたり、
身一つで勝たねば宝の場所は教えないと言い張っていました。
今度は魔法使い達が挑みましたが、
魔法を使う前にやはり吹き飛ばされてしまいました。
今度は騎士と魔法使いが揃って行くと、
一頭に対して二人でこないと勝てないのかと言われます。
国の騎士も魔法使いも連戦連敗、
何とかならないかと悩んだある日、
竜の話を聞いた一人の男、
山から飛び立とうとした竜を魔法で撃ち落としてしまいました。
竜はずるいと抗議しましたが、男は言いました。
お前は狩りの獲物にわざわざ断りを入れて挑むのかと。
すると竜は答えます。
お前は狩りの獲物と取引をしようと思うのかと。
すると男は笑って言いました。
ああするよ。俺の獲物は人間だから。
これを聞いた竜、呆気にとられてしまいました。
所が困った事になりました。
竜は宝なんて持って無く、
知恵比べのつもりで言い出した事だったのです。
気付いた男、笑って竜に言いました。
お前の立派な翼と力は十分宝。仕事を一つ手伝えと。
嫌なら自慢の鱗を頂くと言われては、流石に手伝わざるをえません。
気の進まない竜、男から仕事を聞いて驚きました。
なんと、仕事とはその国のお城に忍び込む事だったのです。
所が不思議な事に、毎夜毎夜と空から忍び込んだはいいものの、
男はいつも手ぶらで戻って来たのです。
忍び込んだらは自分の仕事、上手く行くまで待ってくれ。
ある日、男が一晩戻って来ない日がありました。
夜明けまでに戻ってこない日は、翌晩迎えに来いと言われていました。
その通りに翌晩やって来ると、男はお姫様と出てきたのです。
帰りに竜は言いました。
姫の心を盗めたならば、私の仕事も終わったと。
すると男は言いました。
心を盗まれたのは私の方、本当の仕事はこれからと。
竜は不満半分期待半分、付き合うことに決めました。
それから数日後、隣の国がこの国を攻め込んできたのです。
その国は王様の贅沢で貧乏になっていた国でした。
それを知ると男は竜の背に乗って敵国のお城に飛び込んで、
悪い王様を捕まえてしまいました。
そうしておいて、お姫様の部屋に忍び込み、
貧しくなった国を立て直す手伝いをして欲しいと頼んだのです。
やがて隣の国は豊かになり、仲良くするようになりました。
実はこの男、隣の国の騎士でした。
何時までも贅沢を改めない王様に愛想を尽かして出ていったのですが、
一目惚れしたお姫様の国に攻め入ると聞いて、
居ても立ってもいられなくなったのです。
そして騎士は王様になって、改めてお姫様にプロポーズしたとのことです。
それを見届けた竜は言いました。
お前は二つの国を手に入れた。一つ余りができたぞと。
すると男は言いました。結婚した以上この国はもう一つの国だと。
それを聞いた金の竜、楽しい時間で礼はなったと飛び立って行きました。
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