FC2ブログ

ジングルベルと言う事で 

日誌の代わりに、小説を。
――――――――――

 ここ最近、ユクモ村でちょっと噂になっているハンターがいる。
 異国から来た彼女は金髪碧眼、携える得物はガンランス。
 村付きとして着任する少し前から辺りを荒らし回っていた雷狼竜を倒して日の出の勢い。
 つい先日も、仲間と一緒に山奥で大物を仕留めて帰ったばかり。
 ソイツは正真正銘の大物で、帰ってきたときはみんなで祝った。

 そして、その英雄は今……。

「だるい……熱い……くらくらする……」
 布団の中。額には氷嚢。本来色白の顔はほてって真っ赤。
 瞳は熱で微睡んで、砂色の髪は汗でぴたりと頬に付く。
「ご主人大丈夫ですニャ……?」
「完っ璧に風邪だな」

 うつすといけない。
 蒼い髪の仲間に追い出されるネコ達が、ちょっぴりニヤニヤしていたのは別な話。

【ユクモのくりすます事情】

 冬も冷え込むこの季節、ずぶ濡れ放置じゃ仕方がない。
 今年はアレで狩り納め。ゆっくり静養するとしようと。
 とはいえ普段元気なご主人が、ベッドの上で火照り顔。
 いつもなら豪快に銃槍を振るいサボれば蹴る、そんなご主人の気弱な姿……。
 オトモのネコ達、気が気でなかった。

「今年はご主人に一杯お世話になったニャ」
「一杯お洒落させて貰ったニャ」
「……一杯蹴られたニャ」
「そりゃお前がサボってたからだニャ」

 そんなやり取りがあるのは村の農場、オトモのネコのたまり場だ。
 アイルー、アメショー、銀青、漆黒と、毛並み様々二十五匹。
 ご主人についてった二匹、十九匹に先日の武勇伝を大いに語る。
 手柄が誇張されてるのはお約束。

 それを一歩離れて聞くのは古株四匹。
 真面目は蒼い毛並みに紫色の燕尾服。
 お茶目は白い毛並みにもふもふコート。
 無口は土偶か埴輪か、覗くお手々は桜色。
 クールの漆黒を飾る、蒼い甲殻雷狼竜。
 お払い箱? いやいや、彼らは主人に頼らずとも狩りに出られる実力者。
 先日だって村の留守を任された、その信頼どれほどか。

 それもこれも主人のお陰、その主人が風邪引いた。
 恩返しするなら今しか無いけど、ネタが無い。
 言い出しっぺは蒼い毛並みの最古参。この村に来る前からの付き合いだ。

「ご主人の故郷には“くりすます”って日があるのニャ」
「お祭の日ニャっ?」
「カップルがいちゃいちゃする日ニャ」
「だったらとっくにクエストクリアニャ」
「あと赤い服着た白ヒゲのオジサンが、良い子にプレゼントを配る日ニャ」

「ご主人……良い子ニャ?」
 無口はサボりの常習犯。
 けれどご主人、砲撃大好き撃ちまくり。
 全段発射の巻き添えなんていつもの事で。
 こないだなんて、大きな龍のの背中に投げられた。
 仲間が文句を言わないのは、身ごなしが良いのか慣れたのか。
「……悪い子には黒服が寝室にモツを蒔くらしいニャ」
「鳴き袋でも集めるニャ?」
「そうするニャー」

 そうと決まれば善は急げ。目的もなく貯めたへそくり、軍資金。
 ご主人には内緒だけれど、仲間にだけはご報告。
 心配無用と胸を張る、八つの瞳はニヤニヤしてた。
「と言うわけで、渓流まで行って来ますニャ。明後日には戻りますニャ」
「男なら据え膳ニャー」
「アホ、病人だ」
「……リア充爆発しろニャ」
「さっさと行くニャ」

 ああそうだ。村長にも言っておこう。
 ついでに秘密の相談事もごにょごにょしたらとっても乗り気。
 帰ったときが楽しみだ。

 ガーグァの引く荷車に乗り込み、目指すは渓流。
 狙う獲物はドスジャギィ、目的のブツは鳴き袋。
 彼ら唯一の手違いは、ちらほら舞い出す粉雪か。
 けれど自前の毛皮に防具もある。彼らを丸くするには至らない。
 所が翌晩到着した渓流は、もっともっと寒かった。
 川に張るのは薄氷。ちょっと歩くとぴちゃっと冷たい。
 足の裏が痛いなと思ったら霜柱。

 けれども風邪で寝込んだ主人の為。
 防具を揃えてくれた主人の為。
 育ててくれた主人の為。
 拾ってくれた主人の為。

 冷たい土を、冷たい川を、おみやげ探してごそごそと。
 お休みの中のクマをうっかり起こしてしまったのはご愛敬。
 返り討ちにしてやるニャと意気込んでたら、大あくびして逃げてった。

 ……彼らは、ここに先客がいる事に気付いて無かった。

 渓流の奥地を踏みしめる豪腕を守る金の甲殻。
 蒼い鱗の敷き詰められた太い肩。
 肩から尾の先まで、青白く輝くたてがみと共に流れる金の鱗。
 突き出たアゴ、並ぶ牙、鋭い眼光、前に突き出た太く雄々しい二本の角。
 けれどもしなやかに歩く気品、彼女はれっきとした雌だった。
 彼女はここを気に入っていた。
 丸くて美味しい鳥は食べ放題。
 去年出会ったイケメンと再開できれば最高だけど、狩られた事などつゆ知らず。

 ああ悲しきシングルベル。
 と言うわけで彼女を「ベル」とでも仮称しようか。
 呼ぶ機会がどれ程あるかは解らないが。

 蒼い甲殻を着込んだ漆黒ネコを見つけたとき、彼女は威嚇しようとは思わなかった。
 やもすれば自分にも今頃こんな子供がいたやもと。
 彼女が満腹なのは幸いだった。どんなに腕利きでも、単独行動中に先手を取られるのは流石にまずい。
 こっそりと、こっそりと、土をほじくり虫を探す、その姿を眺めているうちにうとうとと。

 彼女が彼らに見つかったのは、すっかり熟睡した頃だった。
「どうするニャー……?」
「どうしよニャー……?」
 何を、どうするか、狩るかほっとくか。
 思わぬ大物、それで怯む彼らじゃない。
「でも、せっかく寝てるしニャア?」
 土偶が無言でハサミを取り出す。

 それでも野生の本能か、彼女が目を覚ますのにさほど時間はかからなかった。
 彼女を起こしたその音は、頭の上でチョキチョキと……。
 慌てて頭を持ち上げる。
 転がり落ちたネコの鞄から零れたのは白い毛と、ちりちり光る雷光虫。

 ……さて、ここで皆様に問う。
 公園で子供を眺めながらうとうとしていたとしよう。
 ふと気がついたとき、髪がばっさり、あるいは○丸坊主にされていたらどうだろうか?

 大抵の人は呆然とするか怒るか嘆くか、あるいはその全てであろう。

「ゥンガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
 まして野生の世界に遠慮は不要。
 怒りは声となり光となり、丸刈りにされても雷狼竜。
 全身に稲光纏って猛然とネコに躍りかかる。
 この腕の一振りで一網打尽と思ったその時だった。

 ひらりっ。
 カキィン!!

 その豪腕から繰り出される、渾身の一撃をかわされた防がれた。
 蒼い甲殻を纏った漆黒が、雷光もかくやの早さで迫り……。

 べりっ

 鱗を一枚もってかれた。不意を突かれた彼女に投げられた物がドカンと爆発。
 ヒュルヒュルと投げられた何かがまた一枚持って行く。
 呆然とする間も無くお腹の下からも一枚。
 尻尾を振っても腕を振っても、あるネコはかわしあるネコは防ぐ。
 ネコを始めて見る彼女に予想出来る事態では、認められる事態ではとてもなかった。

 そんなとき、彼女が見つけた無防備な背中。
 ごそごそ地面を探る紫色の燕尾服。
 一匹、せめて一匹片付ければ何とかなると、思った彼女が甘かった。
「今日はちょっと趣向を変えてみましたニャ」

 ズボォッ!!

 一瞬、何が起こったのか解らなかった。急に視界が沈んで、腰から下が動かない。
 季節は冬、冷たい地面が散々鱗を剥がされた肌に地味に染みる。
 焦った彼女が暴れたってどうにもならず、その無防備な背中に迫る三つの影。
 姿は見えずと気配は解る。それはきっと、怖かったに違いない。
「かかるニャーっ!!」

 月の夜、響き渡るは悲鳴かな。
 酷いと言ってはいけない。所詮この世は弱肉強食。
 何とか這い出した彼女、このまま許して置くべきかと振り向く。

 ニャー……何ニャ?
 ニャんか近くに来てるらしいニャ。
 おー、すっごいニャー……。

 いたのは先の四匹に加え、物音を聞きつけた好奇心旺盛な地元住民(ネコ)が十数匹。
 勿論巻き込まれては敵わないので茂みの奥から。光る瞳は二十四でもまだ足りない。

 ……逃げた。流石に逃げた。

 きっと相手が小さすぎたのがいけないんだ。
 そうだ、もう少し先にもうちょっと大きくてもうちょっとトロそうなのがいた。
 丸くて美味しい鳥もいたし、たてがみが綺麗に生え替わったらあそこに行こうと。

 彼女が来年の狩り初めの相手になる事が決まった瞬間であった。

 さてさて、鳴き袋は手に入らなかったけど思わぬ収穫。
 一行は大急ぎで村に戻り、大急ぎで村長の所へ。
 秘密の相談事、頼んだ物は準備できたと言うから刈り取った毛で一工夫。
 四匹が着替えた真っ赤なコートと真っ赤な帽子。その白い縁取りに、蒼い光がキラキラ混ざる。

 意気揚々とご主人の家に入ってみれば……。

「ニャ、ニャアァ~……」
「か、帰って、来たニャか……」
「い、いいところニャ……」
「いや、むしろ悪い……ニャ……ガクッ」

 仲間達が死屍累々。
 奥の方、浴場とは別方向から奇妙な臭いが。一体何事と、首を傾げて進む四匹。
 多分厨房の方だと思うけれども……入り口に、主人の仲間が蒼い顔して倒れてた。
「お、お前ら……に……」
 彼が死に体で何か伝えようとした。
 ソレを遮ったのは、あっけらかんとした主人の声。

「おー、帰ったかー」

 すっかり良くなったのかエプロン姿で鍋両手。
 そして四匹の姿をみてぱっと目を輝かせてくれるとやっぱ嬉しい。
「すっげー、お前ら似合ってる似合ってる似合ってるっ」
 満面の笑み。頑張った甲斐はあった。
 その手に持った鍋から、強烈な臭いがしなければ……。
「今日帰ってくるってーから、手料理作って待ってたんだよ」

 この時、うっかり嫌な顔をしてしまった。
 きっと烈火の如く怒るか睨まれると思った。
 それでこそ主人だし良いかニャと思っていた。

 けれどもそれを見た主人が、ちょっと悲しそうな顔をした。
 その時、彼らは自分の運命を悟ったと言う。

「「「「い、いただきますニャー……」」」」



メリークルシミマス♪
スポンサーサイト



[ 2010/12/24 18:00 ] モンスターハンター | TB(0) | CM(0)
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する
ぶつくさ



ブログ内検索
カレンダー
08 | 2019/09 | 10
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -
カウンター
ブロとも申請フォーム